- 2006-03-10 (金)
- Web And Technology
Session - Shut Up! No, *You* Shut Up: A Pattern Language for Moderation Strategies
by Clay Shirky
2006/03/08 09:10-09:30 Elizabeth Ballroom ABCD
講演者について
Clay Shirky
New York University の Interactive Telecommunication Program (ITP) にて講師を務める。WEBが社会や経済に与える影響、特にアプリケーション分散化(非中央集積化)やソーシャルソフトウェアについて執筆・コンサル活動を続けている。Website - Clay Shirky's Writings About the Internet
導入
コミュニケーションを自由化させるとユーザ交流が行われる場では必ずそこにノイズ、非難、扇動等、管理側にとっての「わずらわしさ」が必ずついてまわります。WEBがコミュニケーションの基盤へと変化しはじめている今、このわずらわしさをどう解決するかについて、我々はもっと議論する必要があると私は考えます。
パターン定義の意義
議論をする上で欠かせないのが 「言語のパターン定義」 。 事象や語句についてパターンを定義する事により、言葉の取り違えや意味の説明などを省略した、適切な情報量でのコミュニケーションが可能になります。効率のよい議論が行えるようになります。
先行例から学ぶ - Slashdotの例
コミュニケーションが荒れないよう、悪意のある投稿から読者を守る為の Members (特権層) の存在により、コミュニティの秩序が維持されている良い例。キーポイントは:
- コメントを本文とは別のページにすること
- 読者と書き手を別々に扱うこと - 書き手をより大切に
- 投稿に対して読者に投票させること
- Membersを守る仕組みにすること
Memebersをユーザより大切に扱うこと、善い行いを褒めること、Memebers一覧をサイトで公表すること、彼らに投稿権限は与えないこと
しかしこれだとユーザの参入障壁が高いし、また Members の忠誠度を維持し続けなければならない為、難易度が高い。
先行例から学ぶ - The Bronze Betaの例
The Bronze Beta - 米国の人気番組 Buffy The Vampire Slayer のファンサイト。日本でいう 2ch 的な掲示板サイト。彼らの特徴・キーポイントは:
- ユーザ投稿をサイトの核にすること
- 掲示板以外の特徴・機能はつけないこと
- ユーザID登録を強要しないこと - ログイン無しでも投稿可。
しかしこれだとコミュニティが荒れる可能性が高いし、ユーザ管理・把握がしにくい。
歴史から学ぶ
Thomas Hobbes の主張
著書 Leviathan より - 社会の秩序をする為にはそれを制御する君主の存在が不可欠である。時々暴政が起こりうるが、それでもまだマシだ。
Rousseau の主張
リーダーは民衆の議論を常にサポートする役であるべきだ。リーダーがその役割を果たしていない場合、その事自体を議論する権利も民衆に与えるべきだ。
※歴史からも正解はみいだせはしません。
結び
ソーシャルサービス・ソフトウェアは政治哲学の実験の場なのです。我々は言論の自由・表現の自由そのものを、システムという形に落とし込んでいるのです。
我々は正しい解決策を見つける必要があります。なぜなら長い目で見ると、社会全体の将来が我々にかかっているのだから。
誰もが暗中模索している状況だし、唯一の正解など存在しない。だからこそ
議論を交わす為に必要な言語 (パターン) を皆で定義する事をまずは提案します。
皆の参加を望んでいます:
http://social.itp.nyu.edu/shirky/wiki/
個人的感想
ETechに来て勉強になったのが講演者のプレゼンの仕方です。みんな色々な趣向を凝らして聴衆の注目を引いたり、軽いジョークで掴みを握ったり。すげー参考になりました。そんな中でこのShirky氏のプレゼンは特に好印象。右翼のHobbesと左翼のRousseauを対面させて、
- 俺が正しい
- いや俺だろ
- うるさい黙れ (you shut up)
- おまえが黙れ (no *You* shut up)
なんて喋らせてる辺りが絶妙でした。テキストのレポートではプレゼンのノリが伝えられないのが残念。
で、ノウハウのパターン化。OpenSource寄りのカンファレンスだけあって、Ray Ozzie氏をはじめ、大体が「皆の協力があって始めて意味を成す」的な主張をしています。このパターン化の話も、巨大な集合知になれば、全員が有用に使えるステキなツールになると思えます。だからこそ、ブログで日本の皆にもその想いを伝えたい、と感じました。
ただし大きな障壁はやっぱり「言語の壁」ですね。リンク先の Wiki を見たって大抵は引くわな・・・(汗)。どうすればいいんでしょうかねー。
関連情報
- ETech: Clay Shirky - O'Reilly Radar nat氏による講演をテキスト化した記事
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