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会社が嫌いになったら読む本 - 楠木 新

会社が嫌いになったら読む本 - 楠木 新 (2009年)

ちょいと会社生活小休止中で、色々考えている中、共感出来る内容が多かった一冊。元気貰いました。以下、心に残った部分を引用:

第一章 なぜ四十歳から人は揺らぐのか

p.26

組織の中で一定の役割を獲得するためには、どうしても会社中心の働き方になる。入社してから十年なり、十五年なりの期間は、組織の中で自分を作り上げる取り組みに終始せざるを得ないからだ。 私はそれ自体には肯定的な感じを持っているが、四十歳あたりを過ぎると、仕事中心の働き方の一面性に疑問を感じて揺らぎ始める人が多い。特に、組織に中途半端に従属したり、業務に飽きてくるとそれが強くなる。

p.27

またその揺らぎは、企業のシステムが、合理性、効率性中心で運営されることにも関係している。会社中心の生活では、計測可能なものやお金に換算できるものを相手にするので、どうしても仕事に追われることになりがちである。

そこでは誰もが同じ現実を共有しており、時間や空間も均一のものとしてとらえられている。その結果、他人との比較、違いでしか自分の位置づけを確認できなくなりがちだ。

p.33

考えられるのは「幸福 - 不幸」の軸かもしれない。「勝ち組 - 負け組」が、他者と比較できる金銭や役職などの絶対基準を基にしているのに対し、「幸福 - 不幸」は各人の心の中にその尺度があると言えそうだ。

なぜ「生きる意味」を実感することが難しいのだろうか?

p.36

ひとつは、やはりその他律性にある。
いくら時間をかけて知恵を絞り、各部門の担当者と調整して役員会の資料を仕上げても、自分の著名を付して責任を負うことはできない。主体的に取り組もうと思っても、自分の上の方に知らないルールがあると思っていては力が入らない。

p.37

視点を変えれば、会社のシステムや提供されたルールに従って行動することは、それほど難しくはないし、自分にとっても楽なことが多い。会社の外の世界と自分たちを分離して社内の環境に安住することもできる。たとえ失敗しても言い訳を用意することも可能だ。
自分のオリジナルなものを賭ける必要がないので、いつも安全なポジションにいることもできる。反面、自分の発揮出来る能力の範囲は組織の役割に限定されるので「満たされない」思いから逃れることは難しい。

p.38

思い出すのは、私が、担当していた案件で、社内のプロジェクトを作ろうと思い、役職者に説いて回ったときのことだ。批判も含めて議論の機会を持ってほしかったのだが、興味を示す人は稀だった。
初めは、皆が仕事に忙しくて余裕がないからだと思っていた。しかし、話していくうちに、あることに気がついた。忙しいからではなく、意味を感じて自立的に仕事に取り組んでいない人 (そのときの私もそうであった) は、他のことにも興味を示すことができないのだ。

p.38

組織においては、物事は、原因 - 結果の因果関係で把握されるため、そこから外れたものに大切なものがあると思っても無視されることが多い。効率や合理性の中だけでは、なかなか本来の「生きること」につながらない。

p.40

人生においては苦しみや悩みは当たり前で、それを通じてどれくらい自分を個性化できるかが大切だと考えれば、異なる景色が見えてくる。仕事の実績が目的ではなくて、仕事を通じてどのように自分を個性化するかに転換するわけだ。
「満たされない思い」の解決には、こういう姿勢や心構えの変化が糸口として大事なのかもしれない。
しかしこの軸に移行するには、今までの自分の枠組みを変える必要がある。言い換えれば、効率や合理性中心の組織の論理とは異なるエネルギーに啓蒙されることが求められる。
それは従来の人生の延長線上にはないので、今まで作り上げてきたものを壊したり、確保してきたものを手放すリスクもある。
また、一旦大きく挑んでしまうと元に戻ることはできないので、安全な場所にとどまる人には想像できない労力が求められることもたしかだ。

第二章 誰にも訪れる「こころの定年」

p.44

彼らの「満たされなさ」「生きる意味に対する疑問」をその発言から整理すると、大きくは以下の三つに集約できる。多くの人がこの思いを抱えていた。

「今やっていることが、誰の役に立っているのか」
「成長している実感が得られない」
「このまま時間が流れていっていいのだろうか?」

この、組織で働く意味に悩む状態を私は「こころの定年」と名づけてみた。

p.47

組織との関係でみると、管理機構の重さを語る人が少なくない。
具体的には、管理や社内調整の仕事が半分以上も占めたり、部内に管理職が重複して配置されていて彼らとの調整に疲れ果てたと言う人もいた。また組織の維持が顧客サービスよりも優先されることに納得できなかったと発言した人もいた。

p.48

また転身者へのインタビューを続ける中で感じたのは、彼らの姿勢が「好きなことを仕事にする」ではなく「自分を使って何ができるか」に重点があることだ。
一旦自分を客体化して、誰かの役に立つことを真剣に考えている。
彼らが「いい顔」であるひとつの理由はこの他人に対する姿勢にある。

成長している実感が得られない

p.50

2) 個人と組織の関係の変化から成長感を失う場合
具体的には、思いも寄らない出向内示、管理職試験の失敗、適正のないと思われる部門への異動、上司との人間関係の悪化、不況による組織の活力減退などである。
...
3) 突然の事故や病気による入院など、想定外の要因による場合
転身者にインタビューを続けていると、病気をきっかけに次のステップに転身する人が多いことに驚く。病気そのものが、組織での成長感を見直すきっかけになり、個人の創造性や新しい道を見つけることに意外なほど関係している。

組織の主役はシステムそのものか

p.58

これらの会社は、規格的業務や大量生産を前提に組み立てられていて、個人の労働力を生産などに変換するシステムが経営の中心になっている。
少し極端に言えば、組織での主役は、個人ではなく、システムそのものである。
...
システムの維持、発展が最も優先されるので、組織内では、合理性、効率性が強く要請される。その結果、第一章で述べたように、そこで働く人が「満たされない思い」に悩んだり、自己のかけがえのなさが実感しにくくなるのである。
高度成長期のような右肩上がりでなくなると顕著にその傾向が現れる。特にバブル期以降はそうであった。

生活に根ざした感動や感受性

p.59

それでは会社の中で満たされない気持ちを持ったビジネスパーソンが、現状を打開する具体的手立ては何だろうか。
それは人生の有限性に思いをいたし、効率や機能を追求する中で排除されてきた「生活に根ざした感動や感受性を取り戻す」ことではないか。

第三章 転身のきっかけ - 小児・青年期に伸びやかに表現していた事を思い出す

p.104

転身後の彼らを見ると、面白さや幸福は自分の内部から湧いてくるものであって外部に存在するものではないことがよく分かる。
またそれは、心の奥底にある動機と強く結びついているが、組織で順調に仕事をしているときには自覚していない人が多い。自分が好きだったのはこういうことだったのだと後に改めて気づく場合が少なくないのである。
...
組織での働き方を見直すための大切な土地勘は、小さいころの原体験や好きなこと、夢なのかもしれない。年齢を重ねていっても、過ぎ去った時代のまま留まっているものがある。原体験と自分との関係が持続しているのである。それは、他人と比較することによって自己確認する必要のないもので、そもそもが全人格的なものなのだ。
会社内の価値に縛られている自分を解き放つ一つの方策は、子ども時代に伸びやかに表現していたことを思い出すことなのだろう。

p.108

頭で考えて計画的にキャリア選択するのではなく、とにかく歩き始めてみる。そして間違ったと思ったら、すぐに戻ったり異なる道を探す。そうすれば無理なく変化に対応できる。

第四章 新しい自分までのプロセス - 自己分析は一人では完結しない

p.119

しかし転身者に話を聞いていると、「自己分析」を通しての意志決定ではなく、「具体的な行動」や「人との出会い」によって、新たな世界に移る人が多い。
自分の内面を見つめたり、性格や行動様式を特徴づけることによって得るものはそれほど多くはない。
...
大きくキャリアを変えたり、転職や独立する場合には、先が見えないことが多い。その際にも、人は自己を分析して、能力を高めたり、資格を取ったりすることで対応しがちである。
それも有意義ではあるが、多くの転身者のプロセスをみると、「人との出会い」によって拓けていく場合が多い。おそらく能力を高めて自己を修正するよりも、自己の中にある他者との関係性、他人とつながる力のほうが強力なのだろう。
...
「自己分析」でも自分一人だけで内面を見つめるのではなく、ロールモデルになる人と出会い、その人の生き方を自分に引きなおすことが本当の力になる。そうすれば、より深いレベルで自分理解ができるのである。ここでも他人の存在が欠かせない。

p.122

ある対談で「...三島由紀夫っていう名前みたいにですね、自分を一つに限定しちゃって、しかもトップを走るというイメージで自分のスタイルを決めてしまった。これは苦しいだろうなと思ったですな」と語っていた。
この道一筋ではなくて、あれもこれも的なところがあるほうが柔軟な対応が可能である。また年を経るのに応じて、一生のうちに多様な自分を経験することは、人生を深く味わうことにつながると思っている。

大切なのは、転身のプロセス

p.123

転身者もいきなり会社を辞めて次の目標を目指すわけではない。多くの転身者は、試行錯誤しながら新しい自分を発見する中で、結果として会社を離れたのである。
大切なのは、そのプロセスなのだ。
...
それは、新しい自己イメージに書き換えるプロセス自体が、自らの可能性を広げる作業になっており、本人の成長感につながっているからだ。
...
中高年になっても、いや中高年になったからこそ、今までの経験も糧にして、精神的な成長を伴った可能性を広げていけるのではないか。
異なる役割を経ながら、人生を反芻するという生き方の中にこそ人間の成熟する可能性を感じるのである。

組織で働くメリットも大きい

p.131

人は自分の身近にあるものの大切さに気づかないことがよくある。
多くの転身した人たちの話で感じるのは、キャリアチェンジのプロセスを支えているのは、組織の中で培ったビジネスの基礎体力 (経験、知識、人脈など) だということだ。
また満足のいく転身を果たした人の中にも、会社で働くことが一番良いと再評価する人もいる。
...
まずは、一人の人間として職業を持って生きることの大切さをどのように受け止めるかがポイントなのだろう。組織で働くか、そこから離れるかは、後順位の課題なのだ。

逃げない

p.133

早く楽になりたいと思って「会社が悪い」「上司が分かっていない」と他人のせいにして逃げないことだ。
...
おそらく「心の定年」という不安定な心理状態を抱えながら、持続的に新たな自己イメージを作り上げようと主体的に取り組むことが、一つの回答を提供するからだろう。自分の心の底にある実際の感情に直面していることが大切である。
「何でこんなことになるのか」「これさえなかったら」という「こんなこと」や「これ」の中に、新しい自分を見つけるヒントが隠れていることが多い。マイナスと思える事柄の裏には、プラスの部分が背中合わせになっているからだ。
自分が今までやってきたことを踏まえて変化することが大切なのだ。「こころの定年」から目をそらして安易に転職や起業をしてもうまくいかない。

p.138

いずれにしても、安易に独立や起業を考える、家族と十分なコミュニケーションが取れていないというのは、転身がまだ全人格的な取り組みとして深められていないのだ。 単に組織から逃れるというのは、何も持たずに振り出しに戻るに過ぎないのである。

会社像は自分で作り変えができる

p.138

... 総合職、一般職、営業職、専門職のそれぞれが理解している会社像は、大きく異なっていることに気づいた。
各自が、その職制や労働条件、または自分の生活との関係で「会社」を把握しているのである。
...
そういう意味では、会社は、所詮は幻想である。
これは会社に意味がないということではなくて、頭で作り上げたものであるならば、見方を変えれば、自分の中で作り変えることができるということだ。

p.139

また、私たちは、日常、会社から多くの拘束を受けているように思いがちであるが、むしろ自らが自分自身を縛っている面もあることを忘れてはならない。
「こころの定年」を避けようとするのではなく、常に立ち向かい、場合によっては突き抜けるつもりで取り組むと、自己を深めることにつながるのではないだろうか。

急ぎすぎない

p.144

視点を変えるために、少し長期の休暇を取得したり、普段やっていない身の回りの整理なども有効な場合がありそうだ。
決して急ぎ過ぎないことも大切である。結論を保留することもできるのだ。白か黒か決めないでいるうちに、周りの状況が変わっていく場合もある。同時に、人は少しずつ新たな環境に適応していく能力があることも見逃してはならない。

第五章 主役は具体的な行動と出会い - 転身によって何が変わるのか

p.152

その人の根本である個性や価値観は簡単には動かない。変えることができるのは、姿勢や心構えである。
だから「自分を入れ替えて」とか「すべてご破算にして」というのは、意欲としては理解できるが、ちょっと信用できない感じがある。
...
まずは、あくまでも自分の内面の課題であると考えたほうがいいと思う。特に受け身の姿勢の中から主体性を持つことが一つのポイントである。
姿勢や心構えを変えれば、驚くほどの贈り物に恵まれるのは間違いない。
...
そこに偶発的な事象や人との出会いが絡んで変化が生まれることが多い。場合によっては熱病にかかったような状態で次のステップに移行する人もいる。

第六章 家族に対する扶養義務はどうなる - 家族は扶養対象ではなく「最後の砦」

p.189

破綻した元山一証券の社員が、退職することを自分の子供たちに告げるとき「これからはおもちゃなんかは、大事に使ってくれよ」と言うと、子供たちはバンザイをして「これで、会社に行かなくていいんだね」と、お父さんと一緒に過ごせることを喜んだという話を聞いたことがある。雇用を保障されて安定を確保している反面、それを守るべく無意識のうちに周囲の大切なものを見失うリスクも忘れてはならない。

第七章 なぜ「自分」を変えた人はいい顔なのか

p.192

また、中年期に会社を休職するにいたった動機は、このままの一本道では「いい顔」で過ごすことはできないと感じたからだ。実際に、当時の社内でエリートと目されている人たちの顔つきは、私には必ずしも良いとは思えなかった。

誰かに感謝され評価される心地よさ

p.193

インタビューを始める前は、転身者の「いい顔」は、組織からの命令や要請から離れて、自分の価値観で行動できるようになったからだと思っていた。
ところが、すぐにそれだけではないことが分かった。
はじめの五十人くらいに話を聞いたときに気がついたのは、彼らの姿勢である。
自分の価値観に基づいて「好きなことを仕事にする」のではなくて、「自分を使って何ができるか」の姿勢で、誰かの役に立つことを真剣に考えている。誰かに感謝され、評価される心地よさが「いい顔」にさせているように思えたのだ。

p.194

転身者は、組織で働いていたときに比べて、経済的にも、見かけの肩書きでも、恵まれていない場合が多い。それでも顔つきがいいのである。
...
気がついたのは、彼らが「新しい自分」を発見していることだった。
しかも、それは従来の延長線上ではなく、リストラや突然の出向、自分の病気など会社員生活からみれば、挫折といえる事柄を通して「新しい自分」を見つけ出すのだ。
今までは自分の本来の好みを押し殺して組織に適応してきたが、挫折的なことを伴って、主体的に生きることを決意したことから「いい顔」が現れている。
しかもその新しい自分はかけ離れたところに見つけるのではなくて、自分の悩みの中から立ち上がることが、「いい顔」に結びついているのだ。

p.199

登場いただいた転身者は一度死んでいる人が多いのである。もちろん本当に新だのではない。今まで固執していた生き方のある部分を捨てて(殺して)、そのスペースに新しいものを盛り込むのである。それが彼らを「いい顔」にしている。

「いい顔」の根拠は、<我執> を緩めること?

p.200

今まで、「いい顔」の理由として、「他人の役に立つ姿勢」「新しい自分を見出した」「自分の役割を変えること」「死んで生まれ変わる」の四点について述べてきた。
これらの共通項について考えてみると、最終的には、自分自身に対するこだわり、執着を外すことに行き着くような気がする。
極端に言うと、一般的に言う幸福は、自分の執着やこだわりの中にあるので、漫然と幸福を求める限りは「いい顔」になれないと言えるかもしれない。

p.201

一方、会社の中で勝ち組と見える人は、険しい顔つきの人も多かった。
彼らは、会社内のシステムに過剰に反応し、それを内面に取り入れて適応している。しかしそのシステムの本質は、合理性・効率性の部分が大きいので、本来の自分は何をやりたいのか、どう生きたいのかという、新たな自分を見つける回答はそこからは与えられない。
...
経済的にも恵まれて、組織の中の役職が順調であっても、それを追求したり、守ることによって、内面に苦悩やゆがみが生じてくるとも言える。
そういう執着をすべて捨て去ることはできなくても、緩めるだけでも平穏な気持ちが生まれて「いい顔」につながっていく。私が休職した時に、子供のころの庶民的な商店街の人たちが心の中に現れたのは、彼らが組織の中の合理性とは対極のエネルギーに満ちていたからだろう。

現実を充実させる

p.203

収入を重視する時期、仕事で成長できる実感を中心にする期間、家族と一緒に過ごすことを最優先にする場面があってもいい。人生のライフサイクルに応じて大切なものは異なり、また周囲の状況も変化するからだ。

新たな働き方のスタイル

p.206

現在は、多くの組織で「終身雇用と出世重視の仕組み」に代わる新たなモデルが求められている。しかし、それはもはや会社や組織が一方的に与えるものではなく、個人と組織の相互の関係からしか解決が見えてこないテーマである。
組織側の施策の方向性は「自律・自立を促す」「より多くの選択肢の導入」「空間的、時間的拘束の緩和」「ライフサイクル別の人事運用」「退職後に向けた条件整備」などが思いつくが、いずれにしても紆余曲折、試行錯誤の中で検討を進めていくことが必要になる。

引用箇所多すぎ?著者の楠木さんすいません...

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